時計と美人「美人と櫓時計」
伊東深水画伯の筆による、この「美人と櫓時計(やぐらどけい)」は、1962年(昭和37年)に堀田時計店の再建15周年記念として制作された「時計と美人」シリーズ第一作です。原画を深水画伯が描き、彫りと摺りは渡辺版画店が担当しました。櫓時計とは江戸時代、欧州から輸入されたクロックをモデルに日本で製作された和時計のこと。時計の機械部分(ムーブメント)が櫓(やぐら)のような形の台に収められ、台の中に吊り下げられた錘(おもり)が落ちる力を動力として作動します。別名「大名時計」ともいわれるように大名や豪商が競って購入した非常な貴重品でした。それ故、「美人と櫓時計」というモチーフは江戸時代の浮世絵にも多く見られますが、伊東画伯は堀田家のコレクションにあった櫓時計の形状を確かな筆致で正確に描くと共に、美人を歌麿風に描くことで、江戸時代の雰囲気を見事に再現しています。ちなみに江戸美人の着物には、堀田家の家紋「木瓜紋(もっこうもん)」が描かれています。